2021-02-03から1日間の記事一覧

自ら発熱する中庭(下)【フレーズプラス小説】

はじめはこの往復も大きな苦にはならなかった。腕に疲れこそ溜まっていたものの、日常の空白を忘れ、ひたすら体を動かす単純な作業が錆びついた頭に快かったが、そこは限りある人の身。もとより私は飽きっぽいのだ。直に嫌気がさしてきた。賽の河原で石を積…

自ら発熱する中庭(上)【フレーズプラス小説】

流れ落ちた汗が、眉間を伝い目に染みる。一月の中旬にもかかわらず、私の顔は汗に塗れていた。 手にしたポリバケツ一杯の水を、足元へぶちまける。十キロ近い重量から解放された両腕を曲げ伸ばしし、少しでも筋肉を休ませようとする。今水をまかれたばかりの…